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『次世代型プレバイオティクス』

『次世代型プレバイオティクス』


薬学生のスクラップ2021年 第3期 ⑥

『善玉菌だけを増殖させる「次世代型プレバイオティクスオリゴ糖」発見!!』(近畿大学)



近畿大学の研究グループは、ビフィズス菌を選択的に増殖させることのできる「次世代型プレバイオティクス」となりうるオリゴ糖を発見した。

 【プレバイオティクスとは】


「プレバイオティクス」とは、善玉菌を増殖させ腸内環境を改善する物質で、特に今回発見した特定のオリゴ糖とビフィズス菌の組み合わせは、偽膜性腸炎という腸の病気の新たな治療法開発につながる可能性がある。

本件に関する論文が、令和3年9月23日に、イギリスの腸内細菌や微生物に関する学術雑誌“Gut Microbes”に掲載された。

【論文のポイント】

ポイント①ビフィズス菌などの善玉菌だけを選択的に増殖させるオリゴ糖(ガラクトシル-β1,4-ラムノース)を発見
ポイント②ビフィズス菌が特定のオリゴ糖を栄養源として生育する際に必要な遺伝子を特定
ポイント③特定のオリゴ糖とビフィズス菌を組み合わせて経口摂取することで、偽膜性腸炎の原因菌の生育を抑制

【善玉菌だけを育てることの難しさ】


プレバイオティクスは、腸内環境を改善する目的でサプリメントや食品添加物として経口摂取されるが、大腸まで到達する必要があるため、「ヒトには消化されない」という性質を持つ難消化性糖質が用いられる。
しかし、大腸に到達したプレバイオティクスは腸内に常在する様々な細菌に利用されるため、悪い腸内細菌に利用された場合、目的の善玉菌に行きわたらない可能性がある。プレバイオティクスを開発する際は、悪い働きをする腸内常在細菌が増殖しないよう気を配る必要がある。

以上の課題を解決する目的で、特定の善玉菌だけを増やすことができる「次世代型プレバイオティクス」の開発を目指して研究を行った。

【本件の内容】


研究チームはまず、ヒト腸内常在菌叢 のうち菌数の多い27菌種およびビフィズス菌・乳酸菌・病原菌を試験管内で培養し、このうちビフィズス菌だけを選択的に増殖させる「ガラクトシル-β1,4-ラムノース(以下、GalRha)」というオリゴ糖を、11種類のガラクトオリゴ糖の中からのスクリーニングにより発見した。また、ビフィズス菌を、偽膜性腸炎の原因菌であるディフィシル菌と共にGalRhaを含む培地で培養すると、ディフィシル菌の増殖が抑制されることを明らかにしました。
さらに、ヒトへの応用を視野に入れ、ヒト糞便、ビフィズス菌、ディフィシル菌を同時に培養したところ、GalRhaを含む培地では、含まない培地と比較してディフィシル菌の毒素産生が大きく抑制されました。本研究成果によって、GalRhaとビフィズス菌を組み合わせることによって、難病として知られる偽膜性腸炎の新たな治療法開発につながる可能性が示された。


【今後の展望】

本研究成果は、GalRhaを治療に応用するための第一歩です。今後、投与量や投与方法を工夫し、ヒトの臨床試験を行うことで、次世代型プレバイオティクスを活用した偽膜性腸炎の新たな治療法を開発できる可能性がある。

同様の手法を用いることで、ビフィズス菌のみならず、乳酸菌、酪酸菌、アッカーマンシア菌などの善玉菌を選択的に増殖させる技術を開発することもできる。また、2型糖尿病、クローン病、1型糖尿病、肥満で特徴的に減少している腸内細菌を選択的に増殖させることで、これらの疾患を治療できる次世代型プレバイオティクスを開発できる可能性がある。
さらに、個人差の大きい腸内細菌叢に対応し、1人ひとりに最適なオリゴ糖を選択することで、オーダーメイドプレバイオティクスの開発にも期待ができそうだ。

ひよこ【学生の感想】うさぎ

ターゲティング医療における最終到達点は患者一人一人へのオーダーメイド医療だと考えるが、この研究はまさにオーダーメイド医療の第一歩なのではないかと思う。まずは、個人差の大きい腸内細菌叢に対してオーダーメイドが行われ始め、ゆくゆくは個人のゲノムレベルで実用されるようになると、近未来感にワクワクしてしまう。
                              
                                      熱帯魚おしまいひよこ


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『次世代型プレバイオティクス』