薬学生のスクラップ 2022年 第1期 ⑤
『ケア技法「ユマニチュード」』
人間らしさを大切にするフランス生まれのケア技法「ユマニチュード」(※参照)
富山県立大看護学部(富山市)が全国に先駆けて導入した四年間の「ユマニチュード」の教育プログラムを受けた看護師たちが
来春以降、医療や介護の現場に出る。
驚きの体験談
ユマニチュードを学んだ学生たちは驚きの経験談を語る。
「寝たきりで反応がなかった八十代の男性が、自分の家の様子を話してくれた」。
男性の体を起こし、車いすで病室を出て明るい廊下へ。男性と同じ高さの目線になるようにかがんで手を触れ、視線を合わせて話し掛けていたら、不鮮明だった男性の言葉がはっきりとして会話ができた。話すのは難しいと抱いていた男性への印象が消えた。
ユマニチュードには四つ柱がある。「見る」「話す」「触れる」「立つ」。
ユマニチュードは「あなたのことを大切に思っている」と患者や要介護者に伝えるための技法。
ユマニチュードには四つの柱があり、それは
「見る」「話す」「触れる」「立つ」
「入学当初は看護してあげるという意識だったが、まず患者さんがどうありたいかを考えるようになった」と自らにも考えに変化が起こる。
4年間一貫した教育をはじめて導入
医療や介護従事者らでつくる日本ユマニチュード学会(東京)によると、大学教育で、四年間の一貫した教育は富山県立大が初めて。
同大が開設した専門科目「看護ケアとユマニチュード」では、
一年次に「人とは何か、ケアする人とは何か」という哲学を学び、
二年次は「動くことは生きること」などの概念を学ぶ、そして
三年次は包括的なケア技術として認知症の人へのケアを学ぶ。それらを土台に
四年次はケアのアセスメント(客観的評価)とプラン立案などに取り組む。
毎年9月に4日間の集中講義があり、初年度の2019年はユマニチュード考案者のイヴ・ジネストさんが来日、学生を直接指導した。
二年目からはコロナ禍でリモート講義となり、学生は自宅、教授は大学、ジネストさんはフランスにいて
画面越しの指導となった。
だが、リモートとなった教育でも効果はあり、ユマニチュードを通して患者との関係性を築く実感を得たり、
患者の変化を感じたりする学生も多く、積極性が身に付いた。
患者との距離の取り方を、学生の様子からプロの看護師が学ぶ場面もあったようだ。
ユマニチュード 今後の課題
今後の課題は、ユマニチュードの哲学や方法論を実際の現場で説明できる力を養うことだ。
ユマニチュードは、ヘルスケアの専門家に必要な臨床技術を哲学とコミュニケーション、生理学の観点から系統だてて学ぶことができる。
正しく教えられる教員の養成が急務である。
※<ユマニチュード> 「人間らしさを取り戻す」という意味の造語。
体育学が専門のフランス人イヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんが考案。
ケアに抵抗するなど行動・心理症状がある認知症の人のケアなどに有効とされる。
「見る」「話す」「触れる」「立つ」の四つの技法を用い、
患者や要介護者の元への来訪を告げる「出会いの準備」から始まる五つのステップを行うのが特徴。
食事介助、清拭(せいしき)、着替えなどを単なる作業とするのでなく、
患者らの尊厳や自立・自由を支えるケアとして包括的に提供し、
「この人となら良い時間を過ごせる」と感じてもらえるような関係づくりに努める。
学生の感想
学校の授業でユマニチュードを発案したジネストさんが来日し、認知症患者さんに実践したところ
歯を磨こうとすると噛みついてきり、清拭の際に殴ろうとしていた人が、笑顔で介助を受け入れ
普通に会話ができるまでに変化していて、とても驚きました。
人は人間として扱われることが大切なのかなと、思いました。 おしまい